その他機材

ADAM Audio H715 Reference — スタジオ・フィロソフィーをヘッドフォンに

ADAM Audio H715 Reference
naoto

こんにちは、Music Gear Japan 副編集長のNAOTOです。今回は、ADAM Audio がリリースするフラッグシップ・オープンバック型ヘッドフォン「H715 Reference」をご紹介します。

ADAM Audio といえば、高級スタジオ・モニター・スピーカーで知られるメーカーですが、同社がそこで培った音響設計フィロソフィーをヘッドフォンに応用したのが本機です。ミキシング・マスタリング向けのリファレンス・ヘッドフォンとして、Sonnox 開発の専用キャリブレーション・ソフトウェアと Hi-Fi モードを備えており、スタジオ・モニター並みの精密なリスニング環境をヘッドフォンで実現することを目指しています。

オープンバック設計にチタン被覆 PEN ドライバーを搭載し、低歪みで詳細な音再生を謳う本機は、特に作業空間が限定されたプロダクション・ワークフローにおいて、ヘッドフォン・モニタリングの精度を大きく高める選択肢として注目されています。

Sponsored Link

スタジオ・モニター・メーカーがヘッドフォンに踏み出した背景

ADAM Audio は、高級スタジオ・モニター・スピーカーで業界の信頼を獲得してきたメーカーです。同社のモニター・スピーカーは、ニュートラルな周波数特性と低歪み設計で知られ、多くのプロダクション・スタジオやマスタリング・ルームに導入されています。そのスピーカー設計の根底にあるのは、「正確な音響情報の再現」という哲学です。H715 Reference は、このスタジオ・モニタリング・フィロソフィーを、ヘッドフォンという別のフォーマットに翻訳した製品として位置づけられます。

ADAM Audio がヘッドフォン領域に参入したのは、既存モデル H200(クローズドバック型)からのことです。H200 は、同社のスピーカー設計思想を携帯型デバイスに応用した試みでしたが、H715 Reference はそこからさらに一歩進め、オープンバック設計を採用することで、スピーカー・モニタリングに近い「空間的な広がり」と「自然なステレオ・イメージ」の再現を目指しています。公式説明によれば、オープンバック構造により、クローズドバック型では得られない音響的な透明感と、長時間装着時の聴疲労軽減を実現しているとされています。

ヘッドフォン・モニタリングがスタジオ・ワークフローにおいて重要性を増している背景も、本機開発の文脈として無視できません。リモート・プロダクション、ポストプロダクション施設の小型化、あるいは音響環境が限定された作業空間での制作が増える中で、スタジオ・モニター並みの精密なリファレンス・リスニングをヘッドフォンで実現することへのニーズは高まっています。ADAM Audio がスピーカー・メーカーとしての知見をヘッドフォンに応用するのは、このニーズに応える自然な流れといえます。

特筆すべきは、Sonnox との協業による専用キャリブレーション・ソフトウェアの開発です。Sonnox は、プロ・オーディオ・プラグインで知られる企業ですが、H715 Reference 専用の Headphone Utility プラグインには、スピーカー・モニタリング時の自然なステレオ・クロストークを再現する「クロスフィード機能」が搭載されています。これは、ヘッドフォンの本質的な課題——各チャンネルが完全に分離されることによる不自然なステレオ・イメージ——に対する、ソフトウェア的なアプローチです。スタジオ・モニター・メーカーとプラグイン企業が連携することで、ハードウェアとソフトウェアの統合的なモニタリング・ソリューションが実現したわけです。

また、H715 Reference に搭載される Hi-Fi モードと、バランス型ヘッドフォン・アンプへの対応も、スタジオ・フィロソフィーの延長線上にあります。スタジオ・モニター・システムでは、オーディオ・インターフェイスからモニター・スピーカーへの接続に、バランス・ケーブルが標準的に用いられます。H715 Reference が 4.4mm Pentaconn バランス接続に対応し、150Ω の高インピーダンス設計を採用しているのは、このスタジオ・スタンダードをヘッドフォンの世界に持ち込もうとする意思の表れです。

つまり H715 Reference は、単なる「高級ヘッドフォン」ではなく、ADAM Audio が培ったスタジオ・モニタリング・フィロソフィーを、ヘッドフォン・モニタリングの現実に適応させた、統合的な音響ソリューションとして企画されているのです。

ドライバー・接続・ソフトウェア — 仕様と構成

H715 Reference の核となるのは、40mm のカスタム・ドライバーです。ダイアフラムにはチタン被覆 PEN(ポリエーテルナフタレート)素材を採用し、ネオジム磁石による駆動力と組み合わせることで、低歪みかつ詳細な音再生を実現しています。公式説明によれば、このドライバーは特許出願中の通気システムを備えており、オープンバック設計の利点を最大限に引き出すよう調整されているとされています。

インピーダンスは 150Ω という高めの値に設定されています。これはスタジオ・モニター・アンプやバランス型ヘッドフォン・アンプとの接続を想定した仕様であり、業務用オーディオ機器との親和性を高めています。周波数特性は 9Hz~40kHz(-3dB)と、可聴域を大きく超える拡張レンジをカバーしており、最大 SPL は 113dB(1kHz)、THD は 0.05% 未満(1kHz, 100dB SPL)と、スタジオ・リファレンス用途に求められる精度を備えています。

接続構成は、ヘッドフォン側とソース側の両面で柔軟性が確保されています。イヤーカップへの接続は 2.5mm TRS ジャックを採用し、左右どちらのカップにも接続可能な設計になっています。ソース側の接続オプションは、3.5mm TRS ジャック(ストレート)、6.3mm アダプター、および 4.4mm Pentaconn(バランス接続)に対応しており、スタジオ環境から Hi-Fi オーディオ・セットアップまで、幅広い機器との組み合わせが可能です。

付属ケーブルは 2 種類が同梱されます。1 本目は 1.3m のコイル式スタジオ・ケーブル(最大 3m まで伸長可能)で、スタジオ内での移動を想定した設計です。2 本目は 3m のバランス・ケーブル(4.4mm Pentaconn コネクター)で、バランス型ヘッドフォン・アンプやオーディオ・インターフェイスへの接続を想定しています。

ソフトウェア面では、Sonnox が開発した専用の Headphone Utility プラグインが付属します。このプラグインには H715 Reference 専用のキャリブレーション・プロファイルが組み込まれており、DAW 上でのモニタリング時に周波数特性の補正を行うことができます。さらに、調整可能なクロスフィード機能を搭載しており、スピーカー・モニタリング時に生じるステレオ・クロストークの効果をシミュレートすることで、ヘッドフォン特有の不自然なステレオ・イメージを緩和できます。

加えて、ListenHub というシステムワイド・モニタリング・プラットフォーム(macOS 対応)が付属しており、複数のアプリケーション間でのヘッドフォン・モニタリングを統合的に管理できます。

ハードウェア面では、専用のスイッチにより Hi-Fi モードの切り替えが可能です。このモードは、バランス型ヘッドフォン・アンプとの接続時に、より高い電力供給を活用した音響特性の最適化を実現するものとされています。

物理的な構造としては、スプリング・スチール製のヘッドバンドに、中央カットアウト設計が採用されており、長時間の装着時に頭頂部にかかる圧力を軽減する配慮がなされています。イヤーパッドは磁気着脱式で、人工皮革とソフトクロスの 2 種類が付属し、用途や好みに応じて交換できます。本体は折りたたみ式で、プレミアム・ハードシェル・キャリー・ケースが付属しており、持ち運びと保管に対応した設計になっています。重量は 0.3kg(ケーブル除く)で、長時間の装着を想定した軽量化が図られています。動作環境は -30℃~+50℃、湿度 85% 以下(結露なし)で、2 年間の保証が付属します。

参考リンク

Xからの読者コメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
Facebookでのコメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
Sponsored Link
ABOUT ME
Music Gear Japan
Music Gear Japan
編集部
KAN
Music Gear Japanの編集長であり、サイト全体のコンテンツと方向性を監督しています。彼の情熱は、最新の音楽機材からクラシックな楽器まで、幅広い音楽の世界に広がっています。読者に対して深い洞察と実践的なアドバイスを提供することを目指しています。

NAOTO
副編集長のNAOTOは、音楽プロデューサーとしての経験を活かし、Music Gear Japanのコンテンツ制作をリードしています。彼は特にデジタル音楽機材と最新の音楽テクノロジーに精通しており、常に最先端の情報を提供することに力を入れています。読者に対して革新的で有益な情報を届けることです。
Sponsored Link (Multiplex)
記事URLをコピーしました