Fender Motion 16 — PreSonus ATOM の後継、Studio Pro 統合のコンパクトパッドコントローラー
こんにちは、Music Gear Japan 副編集長のNAOTOです。今回は、Fender が 2026 年春に発表する Motion 16 というコンパクトなパッドコントローラーをご紹介します。
Motion 16 は、Fender が買収した PreSonus の ATOM シリーズの正統な後継機です。16 個の RGB ポリフォニックパッドと 9 つのイルミネーテッドエンコーダーを備え、DAW での制作からライブパフォーマンスまで幅広く対応します。特に注目すべきは、Fender Studio Pro(旧 Studio One)との深い統合で、タイムラインナビゲーション、セッションコントロール、トランスポート機能に直接アクセスでき、Studio Pro の永続ライセンスが付属する点です。
さらに Smart Scale と Smart Chords という機能により、30 以上のコード進行を即座に利用でき、ビートメイキングからメロディ制作まで、初心者から経験者まで幅広いユーザーが活用できる設計になっています。
Fender が PreSonus を統合、Motion シリーズの登場背景
Motion 16 の登場を理解するには、Fender がこの数年で進めてきたハードウェアコントローラー事業への本格参入を知る必要があります。Fender は音楽制作ソフトウェアの大手 PreSonus を買収し、その傘下に収めました。この買収により、Fender は単なる楽器メーカーから、DAW(デジタルオーディオワークステーション)を含むトータルな制作環境を提供するプラットフォーマーへと転換することになったのです。
買収直後、PreSonus の主力 DAW である「Studio One」は「Fender Studio Pro」へとリブランドされました。これは単なる名称変更ではなく、Fender のビジョンを反映した戦略的な決定です。同時に、PreSonus が開発していた ATOM シリーズ(16 パッドと 32 パッドのコンパクトなパッドコントローラー)の後継として、Motion 16 と Motion 32 が発表されたのは、2026 年 1 月の NAMM ショーでのことでした。
ATOM シリーズは、PreSonus が Studio One と連携させた実績のあるコントローラーでした。しかし Fender の傘下に入ったことで、Motion シリーズはより深い統合を実現することになります。Motion 16 に付属する Fender Studio Pro の永続ライセンスは、単なるバンドルではなく、ハードウェアとソフトウェアを一体で提供する Fender の新しい戦略の象徴です。
Fender がこのタイミングでハードウェアコントローラー市場に本格参入する意義は大きいといえます。従来、パッドコントローラーの市場は Akai、Native Instruments、Novation といった企業が主導してきました。しかし Fender は、100 年以上の楽器製造の歴史と、PreSonus 買収によって得た DAW の開発力を背景に、異なるアプローチを取ろうとしています。それは「楽器メーカーとしての品質」と「DAW との深い統合」を両立させることです。
Motion 16 の設計思想には、このコンセプトが明確に反映されています。4×4 のパッドグリッドというコンパクトなフォームファクターは、ATOM の成功を引き継ぎながらも、Fender Studio Pro とのシームレスな連携を前提に再構築されました。タイムラインナビゲーション、セッションコントロール、トランスポート機能への直接アクセスは、Motion 16 がただのパッドコントローラーではなく、Fender Studio Pro の操作インターフェースとして設計されていることを示しています。
16 パッド、9 エンコーダー、Smart 機能 — スペックと操作系
Motion 16 の操作系は、コンパクトながら制作に必要な要素を過不足なく配置した設計になっています。まず中心となるのは、4×4 グリッドに配置された 16 個の RGB ポリフォニック FATAR パッドです。各パッドはベロシティ・プレッシャーセンシティブに対応しており、ドラムの打ち込みからメロディ、コード演奏まで幅広い用途に対応できます。RGB イルミネーションにより、スケール設定やコード進行の状態が視覚的にフィードバックされるため、ライブパフォーマンス中の操作性も向上します。
パッドの上部に配置された 9 つのタッチセンシティブ・イルミネーテッドロータリーエンコーダーは、リアルタイムパラメータコントロールの要です。これらのエンコーダーは Fender Studio Pro の各種パラメータに割り当てることができ、フィルターカットオフ、リバーブ量、パンニング、ボリュームなど、制作中に頻繁に調整する値を素早く操作できます。イルミネーション機能により、現在の設定値が視覚的に確認できるため、ダークなスタジオ環境での作業も快適です。
加えて、マルチファンクション・タッチストリップが 1 つ搭載されています。このストリップは、モジュレーション、ピッチベンド、エフェクトコントロールなど、複数の機能に割り当てることが可能で、表現力の高い演奏を実現します。
Fender Studio Pro との統合機能
Motion 16 の大きな特徴は、Fender Studio Pro との深い統合にあります。パッド上部の左側には、タイムラインナビゲーション用の専用ボタンが配置されており、DAW のプロジェクトビューを素早く操作できます。これにより、パッドコントローラーから手を離すことなく、トラック選択やシーン切り替えが可能です。
右側には「Add ボタン」があり、これを押すことで仮想楽器、オーディオトラック、エフェクトを素早く追加できます。制作の流れを止めることなく、新しい要素を加えられるため、アイデアの実装速度が向上します。
また、Smart Scale と Smart Chords という機能により、30 以上のコード進行を即座に利用可能です。これらの機能を使うことで、メロディ制作やコード進行の構築が直感的になり、初心者でも音楽理論の深い知識がなくても、質の高いコード進行を実装できます。
ディスプレイとトランスポート機能
Motion 16 には、カラーディスプレイが搭載されており、ワークフロー中のビジュアルフィードバックを提供します。このディスプレイにより、現在のスケール設定、コード進行、パラメータ値などが一目で確認でき、制作効率が向上します。
トランスポート機能(再生、停止、録音など)もバックライト付きで搭載されており、ライブパフォーマンスやスタジオでの制作時に、DAW 本体を操作することなく基本的なセッションコントロールが可能です。
接続と電源
接続方式は USB-C で、USB 2.0 バスパワーに対応しています。外部電源が不要なため、ノートパソコンを持ち運んでの制作やライブパフォーマンスにも対応できます。
加えて、2 つの 3.5mm TRS MIDI ポート(入出力)が搭載されており、Motion 16 を他の MIDI 機器やシンセサイザーと連携させることも可能です。これにより、Fender Studio Pro だけでなく、他の DAW や外部音源との組み合わせも柔軟に構築できます。
寸法と重量
本体の寸法は 300 mm(W)× 172 mm(D)× 21 mm(H)、重量は 0.93 kg です。このコンパクトサイズにより、デスクトップスペースが限られたスタジオでも設置しやすく、持ち運びも容易です。ATOM シリーズと同等のフットプリントを保ちながら、統合機能を大幅に強化した設計といえます。
デモ動画
参考リンク
- Fender Motion 16 – Official Product Page
- NAMM 2026: Fender Launches Motion 16 and Motion 32 Polyphonic Aftertouch Controllers
- Fender Motion 16 & 32: First Look at the ATOM Successors
- Fender Studio Motion 16 – Thomann
- DAW込みで実質1万円!? Fender Studio Proが付属するパッドコントローラ、Fender Motion 16/32の実力



